桜のシーズン真っ盛りで、うちの物件はどこも満室です。例年通りといえばそうなんですが、今年はちょっと違うことに気づいています。予約者の顔ぶれが変わってきた。週末だけの観光客だけじゃなく、日曜の夜にチェックインして金曜の昼に出ていく、ワーケーション利用のゲストが明らかに増えているんです。

ワーケーションはもう「話題のキーワード」ではありません。れっきとした予約セグメントになっています。短期賃貸を運営していて、まだこの流れを意識していないなら、平日稼働率を取りこぼしているかもしれません。

まとめ

  • ワーケーション(仕事+休暇)はコロナ禍をきっかけに日本国内で急速に普及し、今や国内旅行の主要セグメントに
  • 宿泊期間が長い(3〜14泊が典型)ため、清掃・対応コストが下がり、1予約あたりの収益が高くなりやすい
  • 安定した高速Wi-Fiは絶対条件。速度が不明な物件はワーケーション客に選ばれない
  • 平日料金の設定見直しが必要。ワーケーション客は平日の宿泊費に敏感で、週単位の割引に反応しやすい
  • 企業がワーケーション費用を経費処理できるケースが増えており、法人・チーム利用の問い合わせが増加している

ワーケーションとは何か?

ワーケーションは「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた言葉で、旅先の宿泊施設から仕事をしながら旅を楽しむスタイルのことです。日本ではコロナ禍を機に政府が推進し、テレワーク普及とともに国内旅行の一形態として定着しました。

利用者の中心は日本人のナレッジワーカー(IT・金融・クリエイティブ系など)で、一人旅やカップル利用が多い。最近は企業がワーケーションを福利厚生として公式に制度化するケースも増えており、独自の補助制度を設けて誘致に力を入れている自治体もあります。

海外からのデジタルノマドとは異なる点も押さえておく必要があります。ワーケーションは基本的に国内需要で、宿泊期間もより短め。日本の企業文化がテレワークに徐々に適応していく流れの中に位置する現象です。

市場規模はどのくらいか?

観光庁は2021年からワーケーションを独立した調査項目として追跡しています。テレワーク実施者のうちワーケーション経験者は約20〜25%で、「やってみたい」という意向層はさらに高い水準にあります。JTBのリサーチによると、ワーケーションの平均宿泊数は5〜7泊で、一般的なレジャー目的の週末旅行(2〜3泊)のほぼ2倍です。

物件管理の観点で計算してみると、6泊のワーケーション予約はチェックイン・アウトや清掃の回数が減り、同じ期間を週末連泊で埋めるより運営コストが低くなるケースがほとんどです。

ワーケーション客が本当に求めているもの

実際のゲストと話してきた経験から、はっきり言えることがあります。安定した高速Wi-Fiは絶対条件です。「Wi-Fiあり」という表記では足りません。具体的な速度が必要。うちの物件ではOoklaのスピードテスト実測値(Nuro光回線で通常400〜600Mbps)をリスト写真に掲載するようにしたところ、このセグメントのゲストのレビューで最も頻繁に褒められる項目になりました。

次に重要なのは:

  1. ちゃんとした机と椅子 — ダイニングテーブルでも椅子の高さが合えば問題ないが、低い座卓は論外
  2. ビデオ通話向けの照明 — 自然光か、顔に当たる位置に置けるスタンドライト
  3. 静かな環境 — 深夜まで騒がしい飲食店や早朝の搬入作業がある立地は、リストに正直に書いておくほうが後のレビュートラブルを防げる
  4. 使える台所 — 外食ばかりではなく自炊もする。作業効率を上げるためにも食費を抑えたいゲストが多い

観光スポットからの近さは、レジャー客ほど重要ではありません。「週末に動き回れる交通アクセス」と「快適な日常生活環境」が優先される傾向があります。

料金設定をどう変えるべきか?

ここが、多くのオーナーが一番見落としやすいポイントです。従来の短期賃貸の料金設定はレジャー需要に合わせた構造、つまり「週末高め・平日安め」が基本。しかしワーケーション客は平日に滞在するため、5〜7泊のトータル費用を重視します。

試してみる価値があるのは次のような施策です:

  • 週割引(7泊以上で15〜25%引き):AirbnbやBooking.comでワーケーション客の転換率が上がりやすい
  • 週末料金の平準化:1週間通しての予約では、週末の料金上乗せを抑えることでトータルの収益が上がるケースがある
  • 法人・チーム対応の整備:グループワーケーションやチームのオフサイト利用に向け、月額料金を把握して領収書発行の流れを整えておく。企業が経費処理できるかどうかは、対応できる手続きがあるかどうかにかかっている

うちでは一部の物件でワーケーション向けを意識したリスト説明に切り替え、観光地へのアクセスより机・Wi-Fi速度・台所設備を前面に出す記述にしました。今のところ平日稼働率の改善につながっています。

リスティングにワーケーション対応を明記すべきか?

明記すべきです。ただし具体的に書くことが前提です。「ワーケーションにぴったり」という抽象的な一言は何も伝えません。「専用デスク・エルゴノミクスチェア、500Mbps光回線、午前中は東向きの自然光が入る」という記述なら、ゲストが判断できる情報になります。

Airbnbでは「ワークスペース」アメニティのフィルターを使って物件を探すゲストが増えています。楽天トラベルは2022年にワーケーション専用フィルターと特集ページを追加し、じゃらんも同様の機能を備えています。各プラットフォームのアメニティ設定を正確に入力することが、このセグメントの検索結果に表示されるかどうかに直結します。

BenStayで実際に変えたこと

このセグメントを意識してから、いくつか具体的な対応をしました:

  • 全物件の椅子を折りたたみ式から適切な作業用チェアに交換
  • Wi-Fiスピードテストのスクリーンショットをリスト写真に追加
  • 全物件の週割引を20%に統一
  • ハウスマニュアルに「近隣のWi-Fi完備カフェ一覧(バックアップとして)」のセクションを追加

小さな投資ですが、平日稼働率のかなりの部分をこのセグメントが担うようになっています。

よくある質問

Q: ワーケーション客に必要なWi-Fi速度はどのくらいですか?

Zoom・Teams・Google Meetなど一般的なビデオ通話と通常の業務ファイル作業には、上下50Mbps程度あれば十分です。ただし、ワーケーション客はスペックを比較した上で予約する習慣があります。300Mbps以上の実測値を提示できると、他物件との差別化になります。建物の共用回線で速度が安定しない場合は、このセグメントへの訴求を始める前に回線の見直しを検討してください。

Q: 会社がワーケーション費用を経費にすることはできますか?

業務目的が認められる場合、旅費・宿泊費を経費や福利厚生費として処理できるケースがあります。国税庁もワーケーションに関する考え方を示しており、ワーケーション制度を正式に導入した企業は交通費・宿泊費を適切に処理できる場合があります。具体的な経費処理の方法については、会社の経理担当者や顧問税理士にご確認ください。

Q: ワーケーション向けのフィルター・機能があるOTAはどこですか?

Airbnbには「ワークスペース」アメニティカテゴリと専用フィルターがあり、仕事向け物件を探しているゲストの検索に表示されやすくなります。楽天トラベルは2022年にワーケーション専用フィルターと特集ページを追加。じゃらんも同様のフィルターを備えています。いずれのプラットフォームでも、アメニティ情報を正確に登録することがワーケーション検索への表示につながります。


この記事は情報提供を目的としており、法律・税務上のアドバイスではありません。具体的なご状況については、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。