空き家を民泊物件に:リノベーションの実際のコストとは
目次
数ヶ月に一度、「地方に300万円の空き家が出ているんだけど、これを買ってAirbnbとして運営できるかな?」というメッセージが届きます。正直に言うと、答えは「できるかもしれないが、購入価格はこの投資判断の中で最も重要度が低くなりがちな数字だ」です。
まとめ
- 空き家は購入価格こそ安いものの、プロジェクトが成立するかどうかを左右するのは購入価格ではなくリノベーション費用であることがほとんどです。
- 1981年6月1日より前に建築確認を受けた建物は旧耐震基準で建てられている可能性があるため、耐震診断を受け、改修や用途変更の要件を建築担当窓口に確認してください。価格の安さだけで飛びつく前に必ず織り込むべきポイントです。
- リノベーション後の空き家であっても、民泊の届出や旅館業(簡易宿所)の許可は他の物件とまったく同じように適用されます。購入価格が安いからといって規制面が簡略化されるわけではなく、民泊自体も年間180日という上限があります。
- 多くの自治体に空き家改修の補助金制度がありますが、通常はリノベーション費用の一部しかカバーせず、一定年数の使用や地元居住要件など条件が付くことが一般的です。
- 表面利回りではなく実質利回りで数字を評価すべきです。宿泊事業に転用した物件では、この2つの差——いわゆる運営コストのギャップ——こそが初めて購入する人にとって最大の落とし穴になります。
なぜ空き家はそもそも安いのか?
空き家が安いのは、市場がすでにその物件の問題点を価格に織り込んでいるからです——これはリスティング価格に心を動かされる前に理解しておくべき最初のポイントです。総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、日本の空き家数は過去最多の900万戸、空き家率も過去最高の13.8%に達しています。国土交通省は、この増加の背景に人口減少、相続、土地活用需要の弱さ、解体・管理コストの負担などがあるとしており、実際に多くの空き家は再販需要が弱い地域にあったり、相続関係が整理されていなかったり、何十年も修繕が行われていなかったりします。300万円という価格タグは、通常の物件の「割引価格」ではなく、「この物件には手を入れる必要がある」「立地に制約がある」あるいはその両方であることを市場が伝えているのです。だからといって悪い取引だとは限りません。ただし、通常であれば購入価格の交渉が担う役割を、今度はリノベーションと運営コストの計算が担うことになります。
リノベーションでは実際に何をする必要があるのか?
短期賃貸への転用を目指す空き家のリノベーション範囲は建物の築年数に大きく左右され、1981年6月1日より前に建築確認を受けた建物は特に慎重な確認が必要です。日本はこの日付を境に耐震基準を強化しており(新耐震基準)、価格の安い空き家の多くは築年数が古いため、リノベーション費用を見積もる前に建築時期と建築確認の時期を確認しましょう。この改正以前の建物であれば、内装や設備、家具の予算を組む前に、耐震診断を受け、改修や用途変更の要件を建築担当窓口に確認してください。あわせて、基礎の状態や屋根の健全性を含めた構造診断も受けるべきです。構造以外でも、空き家を短期賃貸に転用する際によく発生する費目は、電気配線の全面やり直し(古い配線では最新家電やゲストの機器の負荷に対応できないことが多い)、配管・給湯器の交換、断熱工事(古い日本家屋は現在とは異なる気候想定で建てられ、断熱が最小限であることが多い)、そして通常の登録宿泊施設と同じ基準を満たすための消防設備です。消防法令への適合や必要な安全設備の設置は必須ですが、電気配線・配管・給湯器・断熱・構造補強については建物の状態や地元の建築・消防部局の審査次第です。とはいえ、これらが必要になるケースは多く、それこそが空き家を合法的に運営できる短期賃貸物件に変える際の実質的なコストになりがちです。
リノベーション後の空き家は許認可の扱いが違うのか?
いいえ——リノベーション済みの空き家であっても、購入価格に関係なく、日本の他の短期賃貸物件とまったく同じ民泊届出または旅館業(簡易宿所)許可が必要です。住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊は、台所・浴室・トイレ・洗面設備などの住宅要件や居住用途としての要件を満たす住宅を対象とした届出制度で、年間の宿泊提供日数は180日が上限です。旅館業(簡易宿所)はこれとは別の許可制度です。購入価格の安さが規制上の近道になることはありません。消防基準を満たし、該当する制度に応じて地元自治体に届け出または許可申請を行い、その地域に適用される都道府県・市区町村の条例に従う必要がある点は変わりません。地方の自治体の中には、都市部の民泊規制と同様に、営業日数の制限や近隣への周知を独自に求めるところもあります。土地勘のない地域で始める場合は、リノベーションのスケジュールだけでなく、地元自治体の手続きにかかる時間も見込んでおくべきです。
空き家補助金は予算に組み込む価値があるか?
自治体の空き家補助金はリノベーション費用を大きく軽減できる可能性がありますが、通常は部分的かつ条件付きであるため、資金計画の前提ではなく「あればありがたいもの」として扱うべきです。空き家件数の削減に積極的に取り組んでいる自治体を中心に、多くの自治体が改修助成金、解体補助金、あるいは低金利融資を空き家の再利用に紐づけて用意しています。ただし制度は自治体ごとに大きく異なり、一定年数の使用が条件となっていたり、所有者の地元居住が求められたり、そもそも短期賃貸での利用を対象外として長期の居住利用のみを想定している場合もあります。予算を組む前に必ずその自治体の制度内容を確認し、対象外かもしれない補助金をあてにしてリノベーション予算に穴を空けないようにしましょう。
実際のROIはどう評価すべきか?
空き家を短期賃貸に転用するプロジェクトを評価する正しい方法は、多くのリスティングが謳う表面利回りではなく、実質利回り——購入価格・リノベーション費用・許認可取得費用・家具費用などすべてのコストに対する営業純利益の割合——です。この2つの差は、そのまま使える物件よりも空き家転用プロジェクトの方がより重要になります。OTA手数料、清掃費、光熱費、消耗品、外部委託管理費、固定資産税、リノベーション積立といった通常の運営コストに加えて、購入価格に匹敵する、あるいはそれを上回ることもあるリノベーション費用を償却していく必要があるからです。稼働率の前提もここではさらに重要になります。訪日需要が限られる地方の空き家と、観光の主要動線上にある似たような物件とでは、実現可能な稼働率がまったく異なる場合があり、その差は購入価格をさらに値切ること以上に、実際のリターンを左右するのが一般的です。
よくある質問
Q: 短期賃貸を目的とする場合、空き家をリノベーションするのとリノベ済み物件を購入するのとではどちらが総合的に安いですか?
一概には言えません。建物の状態によります。基礎に問題があったり1981年以前の構造であったりする安価な空き家は、内装だけ手を入れれば済むやや高めの物件よりも、総額では高くつくことがあります。価格だけで比較する前に構造診断を受けることをおすすめします。
Q: 全面リノベーションをしなくても空き家で短期賃貸を営業できますか?
民泊届出や簡易宿所許可に必要な消防基準・許認可要件を満たしていれば営業は可能で、それ以上の内装の見た目は法的な問題ではなく事業判断の問題です。ただし、特に築年数の古い空き家の多くは、少なくとも電気配線・消防設備・構造面の工事なしにはこれらの要件を満たせません。
Q: 空き家補助金は短期賃貸への転用にも使えますか?
自治体の制度次第で、使える場合と使えない場合があります。長期の居住目的での再利用を促すことを目的とした補助金制度も多く、その場合は短期賃貸での利用を明示的に対象外・制限としていることがあります。予算に組み込む前に、必ず地元自治体に対象条件を確認してください。
本記事は情報提供のみを目的としており、法律または税務に関する助言を構成するものではありません。個別の状況については専門家にご相談ください。
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