日本の喫煙事情は、海外から来たゲストにはわかりにくいようです。多くの街で路上喫煙が禁止されている一方、居酒屋には基準を満たした喫煙室が設けられていることもあります。IQOSのような加熱式たばこに切り替えた人も多く、「あれはタバコとは別物」と考える人も少なくありません。短期賃貸の運営者はこの混乱の板挟みになります。たいてい夜11時ごろに「ベランダで吸ってもいいですか?」というメッセージが届くのです。

うちでは喫煙ルールを何度か見直してきました。この記事では、今のルールに落ち着いた理由と、誰も事前に教えてくれなかったこと(加熱式たばこ、ベランダ、臭いの除去に必要な作業と予約への影響)をまとめます。

まとめ

  • 小規模運営者の多くは、室内を全面禁煙にするのが無難です。その際、紙巻きたばこ・加熱式たばこ(IQOS、glo、Ploomなど)・電子たばこを明記しておきましょう。
  • ベランダはトラブルになりやすい場所です。煙が近隣に流れますし、管理規約でベランダ喫煙を禁止している建物もあります。
  • 東京の多くの区をはじめ、路上喫煙を制限している自治体は多くあります。ゲストに伝えるべきは「どこで吸えないか」より「どこなら吸えるか」です。
  • 臭いの除去のために1泊以上販売を停止することがあり、追加清掃費と売上損失が通常の清掃料金を上回る場合があります。
  • うちの経験では、追加清掃費等の請求条項より、予約時・到着前・室内の3か所で同じルールを繰り返し伝えるほうがトラブルを防げます。

民泊で喫煙を許可すべきか?

小規模運営者の多くにとって、答えは「室内は禁煙にして、吸える場所を具体的に案内する」です。道徳の話ではありません。理由は火災リスク、近隣との関係、そして清掃コストです。

煙の臭いは、特に換気が限られた場所では家具や布製品に残ることがあります。畳、クロス、布団、カーテンはどれも臭いを吸い込みます。喫煙するゲストが3泊すると、次のゲストが玄関に入った瞬間に気づくほど臭いが残ることがあります。そしてレビューを書くのは、その次のゲストです。

もう一つは火災リスクです。布団の上での寝たばこは住宅火災の典型的な原因で、日本の布団は床に直接敷きます。宿泊施設には消防法上の要件がすでにあるので、避けられる火元をわざわざ増やしたくはありません。

もちろん喫煙可で運営している人もいます。庭付きの一戸建てや、喫煙ニーズの強い客層を狙った物件などです。追加の清掃コストを価格に織り込み、ゲスト層が狭まることを受け入れられるなら成り立ちます。ただし、喫煙を認める前に、施設とそれぞれのスペースに適用されるルールを確認してください。ホテル・旅館の共用部分は、基準を満たした喫煙室を除き原則として屋内禁煙ですが、要件を満たす個室の客室は適用除外とされています。簡易宿所の相部屋(多人数で共用する寝室)は、この客室の適用除外の対象外です。マンションの一室や共同住宅なら、私は喫煙可にすることをおすすめしません。

加熱式たばこは「喫煙」に含まれるのか?

ハウスルール上は含めるべきです。必ず明記してください。多くのゲストは本気で「含まれない」と思っています。

日本では加熱式たばこがすっかり定着していて、旅行中に使い始める人もいます。臭いは紙巻きより弱いものの確かにあり、うちの経験では布製品に残ります。うちも最初は「禁煙」とだけ書いていました。するとゲストは「紙巻きたばこ禁止」と受け取り、「IQOSだけなので大丈夫ですよね?」という返信が来るようになりました。

今はこう書いています。

室内およびベランダでの喫煙・電子たばこの使用は禁止です。紙巻きたばこ・加熱式たばこ(IQOS、glo、Ploomなど)・電子たばこ/VAPEのいずれも対象です。喫煙される場合は[この物件の指定喫煙場所]をご利用ください。

今は製品の種類をひとつずつ明記しています。

ベランダはどうするか?

ベランダは、室内以上にトラブルの元になることがあります。煙は上の階や隣の部屋の開いた窓、干してある洗濯物に流れていきます。日本ではこれに近所の人がすぐ気づき、運営者ではなく管理会社や管理組合に苦情を入れることが多いのです。

物件がマンションにあるなら、ベランダについてゲストに何か伝える前に管理規約を確認してください。ベランダは完全な専有部分ではなく「専用使用権のある共用部分」とされていることが多くあります。また、管理規約や使用細則でベランダ喫煙を禁止している建物もあるので、ご自身の物件に適用される書類を確認しましょう。ゲストが規約に違反すれば対応するのは運営者で、建物全体で民泊への反対が強まるきっかけにもなりかねません。

なので、うちはベランダも原則禁煙です。近隣の窓から離れた庭の一角のような適した屋外スペースがある物件に限り、きちんとした灰皿を置いて喫煙所にすることもあります。そういう場所がなければ、確認済みの喫煙所を案内し、利用できる時間もあわせて伝えます。

ゲストはどこで吸えばいいのか?

ゲストには「吸えない場所」だけでなく「吸える場所」を教えてください。

東京の多くの区や他のいくつかの自治体では路上喫煙が制限されていて、過料の対象になる地域もあります。「室内禁煙」と言われて外に出たら「路上喫煙禁止」の看板があり、ゲストは行き場を失います。そして「ベランダならまだマシだろう」と、こっそり判断する人が出てくるのです。

今は到着前メッセージとハウスマニュアルに次の内容を入れています。

  • 最寄りの喫煙所の地図ピン、歩き方の簡単な説明、利用できる時間
  • 店頭に灰皿を置いているコンビニもあるが、全店ではなく状況も変わるので、店の屋外スペースを使う前に許可を確認してほしいという注意書き
  • 携帯灰皿を持っていても、禁止されている場所での喫煙が認められるわけではないという注意(千代田区のように、携帯灰皿を使っていても路上喫煙を禁止している区もあります)

「どこで吸えますか?」は、チェックイン時間、Wi-Fi、ゴミ出しと並んでよく来る質問です。うちのゲスト向けチャットボットには物件ごとに最寄りの喫煙所を登録してあり、すぐに答えを返します。こちらの返信の手間が省けますし、ゲストが喫煙場所に迷う前に案内できます。

ゲストが室内で吸った場合のコストは?

思っているより高くつくことが多く、実際に回収できるデポジットや請求額を上回ることもあります。

臭いを消すために、うちでは実際にこんなことをしてきました。

  • カーテンや寝具カバーの洗濯・交換
  • 布団やクッションのクリーニング・交換
  • 専門の消臭業者への依頼。そのために1泊以上ブロックすることもあり、臭いが完全に取れるとは限りません
  • ひどい場合はクロスの張り替え

清掃費より、ブロックした分の宿泊売上のほうが大きくなることもあります。ハウスルールの追加清掃費等の請求条項は心強く見えますが、OTAのダメージ請求で実際に回収するには時間がかかりますし、写真・領収書・経緯の記録といった証拠も必要です。証拠は、臭いがまだ残っているうちに、チェックアウト後、清掃前の点検で集めましょう。煙の臭いや灰を見つけたら、掃除で済ませずすぐ報告するよう清掃スタッフに伝えておくことが大切です。

ルールを守ってもらうには?

ゲストが目にするすべての場所で、同じルールを伝えましょう。

  1. リスティング:プラットフォームの喫煙設定を「不可」にし、ハウスルール本文にも書く
  2. 予約確認メッセージ:短く一行で
  3. 到着前メッセージ:ルールと最寄りの喫煙所をセットで
  4. 室内:玄関とベランダの扉に小さな掲示。英語も日本語も読めないゲストのためにピクトグラムを添える

ベランダの扉の掲示が大事なのは、ベランダで吸うかどうかを、ゲストがまさにその場所で決めるからです。

よくある質問

Q: 室内で喫煙したゲストに清掃費を請求できますか?

ハウスルールに費用を書いたからといって、それだけで請求が有効になるわけではありません。固定の違約金より、実際にかかった追加清掃費や修繕費を記録に基づいて合理的な範囲で請求するほうが確実です。定額の請求額は関係法令とプラットフォームの規約に沿っている必要があり、消費者にとって一方的に不利な条項は消費者契約法第10条により無効とされる可能性があります。回収方法も予約プラットフォームの規約と手続きによります。請求を裏付けられるよう、日付入りの写真、清掃スタッフの報告、請求書を残しておき、請求を当てにする前に各プラットフォームの最新のルールを確認してください。

Q: 禁煙にしていても煙感知器は必要ですか?

はい。禁煙ルールを全員が守るとは限らないので、物件に必要な火災警報設備は必ず備えてください。必要な設備は、消防法上の用途区分、間取り、規模によって異なります。住宅として扱われる物件では住宅用火災警報器で足りる場合がありますが、宿泊施設として扱われる場合は一般に自動火災報知設備が必要です。具体的な設置内容は所轄の消防署に確認しましょう。違反を検知するために喫煙センサーや空気質センサーを使う運営者もいますが、こうした任意のセンサーは必要な設備の代わりにはなりません。プライバシーには十分注意し、監視機器があることはゲストに事前に伝えてください。

Q: 加熱式たばこがこれだけ普及している日本で禁止するのは、ゲストに不親切では?

吸える場所をあわせて案内するなら、不親切ではないと思います。明確なルールにはほとんどのゲストが納得してくれます。ゲストが困るのは、ルールが曖昧なうえに代わりの選択肢がないときです。


本記事は情報提供のみを目的としており、法律または税務上の助言を構成するものではありません。具体的な状況については、資格を持つ専門家にご相談ください。