これまで見てきたROI試算表では、清掃費やOTA手数料、光熱費は比較的正確でも、固定資産税が過小に見積もられているケースが多くあります。難しい話でも隠された制度でもなく、単に日本で不動産を所有した経験がないと過小評価しやすいだけです。そして稼働率に関係なく、毎年必ず発生します。

物件の広告に載っている表面利回りと実際の保有コストを比較しているなら、固定資産税はその差を生む要因の一つです。ここでは固定資産税とは何か、おおよその金額感、そして民泊運営者が見落としがちな落とし穴について説明します。

まとめ

  • 固定資産税は毎年1月1日時点で土地・建物を所有している人に課される市区町村税で、標準税率は評価額の1.4%。市街化区域等に所在する土地・家屋には、制限税率0.3%以内の都市計画税が固定資産税とあわせて課される場合がある。
  • 課税標準となる評価額は市区町村が決定し、特に建物については実勢価格より低く設定されることが多いが、およそ3年ごとに評価替えが行われ、上昇することもある。
  • 小規模住宅用地(住宅1戸につき200m2まで)は、固定資産税の課税標準額が評価額の6分の1に軽減される(都市計画税は3分の1)。ただし簡易宿所として正式に許可を取ると建物の用途区分が変わり、この特例の対象から外れるリスクがある。
  • 納税通知書はおおむね4月〜6月頃に届き、4期分割または一括での納付が可能。具体的な時期は自治体によって異なる。
  • 稼働率に関係なく毎年発生する固定費であるため、最良シナリオの利回り計算だけでなく、損益分岐点の試算にも必ず組み込むべき項目。

固定資産税とは何か、誰が払うのか?

固定資産税は、毎年1月1日時点でその土地・建物を所有している人に課される市区町村税です(ただし東京23区内では、特例として東京都が課税します)。外国人所有だからといって免除されることはなく、短期賃貸として使用しているからといって免除されることもありません。2月に物件を取得した場合、法律上はその年の1月1日時点の所有者(=売主)が納税義務者ですが、実務上は決済時に日割りで精算するのが一般的です。

標準税率は評価額の1.4%です。この評価額は購入価格ではなく、市区町村が個別に算定します。市街化区域等に所在する土地・家屋には、これに加えて制限税率0.3%以内の都市計画税が課され、多くの場合、固定資産税と合算して1枚の納税通知書で届きます。

固定資産税はどのくらい見込んでおくべきか?

購入価格ではなく評価額をもとに予算を組むべきです。この二つはほとんど一致しません。建物の評価額は実勢価格より低めに設定されるうえ独自のペースで減価していきますし、土地の評価額は固定資産評価基準に基づいて算定され、公示地価のおおむね7割程度が目安です(国税庁の相続税路線価とは別の制度なので混同しないよう注意してください)。東京都心や京都のような人気エリアでは、実際の取引価格を下回ることが多くあります。この差は納税額にとってはプラス材料ですが、あくまで推測ではなく確認すべき数字です。評価額は毎年の納税通知書に記載されており、購入前であれば仲介会社や売主から前年の金額を確認できます。

注意したいのは、評価額はおよそ3年ごとに「評価替え」が行われる点です。購入時点では有利に見えた金額でも、特に地価が上昇しているエリアでは将来的に上がっていく可能性があります。

民泊を運営すると税額は変わるのか?

住宅宿泊事業法に基づく民泊を行っても、住宅用地の特例が自動的になくなるわけではありませんが、自動的に維持されるわけでもありません。課税庁は建物(またはその該当部分)が実際にどのように使われているか——継続的な居住の用に供されているかどうか——を踏まえて判断するとされているため、この軽減を前提にする場合は事前に自治体へ確認してください。より明確にリスクがあるのは、旅館業法に基づく簡易宿所として正式に許可を取得するケースです。この場合、建物の用途区分が変わることがあり、それに伴って小規模住宅用地(住宅1戸につき200m2まで)に適用される「住宅用地の特例」——固定資産税の課税標準額を評価額の6分の1に軽減する制度(都市計画税は3分の1)——の対象から外れる可能性があります。この特例を失うと、建物自体には何も変化がなくても、土地部分の税額が大きく増えることがあります。

だからといって簡易宿所化を避けるべきという話ではありません。専業で短期賃貸事業を行うなら、むしろ適切な選択であることが多いです。ただし、この点は転換後に納税通知書を見て気づくのではなく、転換前に自治体や税理士に確認しておくべき項目です。

ROI計算においてなぜ重要なのか

固定資産税は毎年発生する固定費であるため、まさにストレステストすべきシナリオ——稼働率が低い季節や不調な年——で最も効いてきます。清掃費やOTA手数料と違って、予約が減っても連動して下がることはありません。私たちがホテル・ゲストハウス向けROI計算ツールjapan-investを作った際も、このカテゴリーを後回しにしないよう意識しました。表面利回りと手元に残る利益の差は、たいてい一つの大きなサプライズではなく、こうした小さな固定費の積み重ねだからです。

これから物件を検討するなら、評価額の割合からのざっくりした推測ではなく、現在の固定資産税の実額を確認することをお勧めします。自治体によって評価の実務にばらつきがあるため、単純なパーセンテージの推測では実額と大きくずれることがあります。

よくある質問

Q: 短期賃貸物件が1年間空室でも固定資産税はかかりますか?

はい。固定資産税は1月1日時点の所有に対して課されるものであり、その年の稼働状況や収入とは関係なく発生します。

Q: 固定資産税は日本全国どこでも同じですか?

固定資産税の標準税率は1.4%で、多くの自治体でこの税率が使われています(該当地域ではさらに都市計画税0.3%以内が加わります)が、実際の税率と都市計画税の有無、そしてその税率が適用される評価額や納付スケジュールは自治体ごとに確認してください。実際の金額は地域によって異なります。

Q: 固定資産税は事業経費として計上できますか?

短期賃貸事業に使用している物件であれば、一般的に固定資産税は必要経費として計上できますが、按分方法(特に自宅兼用物件の場合)は個別の状況によって異なります。

本記事は情報提供を目的としたものであり、法律または税務上の助言を構成するものではありません。個別の状況については、専門家にご相談ください。