毎年1月、BenStayの確定申告をしながら「これ、もっと早く知っていれば」という控除をひとつは見つけます。中でも一番驚いたのは、宿泊税でも減価償却でもなく、多くのフリーランスや小規模な宿泊事業者がその存在すら知らない制度でした。小規模企業共済です。

まとめ

  • 小規模企業共済は、独立行政法人・中小機構が運営する、個人事業主や小規模企業の役員向けの退職金積立制度です。
  • 掛金は月額1,000円〜70,000円まで500円単位で設定でき、支払った掛金の全額が所得控除の対象になります。上限に達するまで比例して控除額が増える点が大きな特徴です。
  • 受け取り時は、通常の所得として受け取るよりもかなり有利な税制が適用されます。特に廃業・退職時に一括で受け取る場合です。
  • 加入資格は業種と事業規模によって決まります。不動産賃貸業や宿泊業を営む方は、加入前に自身が対象になるか必ず確認してください。
  • iDeCoとの併用も可能です。仕組みや受け取り時期が異なるため、比較検討する価値があります。

小規模企業共済とは何ですか?

小規模企業共済は、独立行政法人・中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する、小規模事業の経営者向けの退職金積立・税制優遇制度です。民間の保険商品ではなく、準公的な機関が運営している点が特徴です。毎月一定額を積み立て、受け取り額は掛金の金額・払い込んだ月数・請求理由(共済金の種類)に応じて定められた基本共済金に、毎年上乗せされる付加共済金を加えた額として計算されます。現在の想定利率はおおむね年1.0%ですが、この利率は今後変更される可能性があり、任意解約の場合は加入期間が短いと払込総額を下回ることもあります。会社員のような退職金制度を持たない、個人で事業を営む方のために設計された制度で、まさにBenStayの読者に多い「自分ひとりで事業を回しているフリーランス」に当てはまります。

誰が加入できますか?

加入資格は基本的に個人事業主と、一定規模以下の小規模企業の役員に限られます。宿泊業・娯楽業に該当するサービス業と不動産業は、常時使用する従業員が20人以下であれば加入対象です。宿泊業・娯楽業を除く商業・サービス業は、5人以下であることが条件になります。不動産賃貸による収入を事業所得ではなく不動産所得としてのみ確定申告している場合は、中小機構は概ね一定の事業規模も求めており、例えば貸家5棟以上、貸室10室以上、駐車場・貸地50件以上、あるいは55万円または65万円の青色申告特別控除を受けられる規模であることが目安になります。短期賃貸事業を営んでいる方は、「なんとなく加入できるだろう」と思い込まず、加入前に中小機構または税理士に直接確認することをお勧めします。この点は簡単な検索だけでは判断しきれない、きちんとした確認が必要な部分です。

税金はどのくらい節約できますか?

税制メリットの核心は、「小規模企業共済等掛金控除」という専用の控除枠が用意されている点です。支払った年間掛金の全額を、所得税の計算前の所得からそのまま差し引くことができます。所得が上がると効果が薄れる控除とは異なり、この控除は掛金を増やせば増やすほど、月額70,000円(年間840,000円)の上限まで比例して大きくなります。所得税率が高い事業者ほど、毎年の課税所得を確実に圧縮できる効果は大きく、すでに適用している青色申告特別控除に上乗せできる点も魅力です。

受け取るときはどうなりますか?

受け取り方法は一括受取が基本ですが、一定の条件を満たせば分割受取(年金形式)や、一括と分割の併用も選べます。分割受取・併用が選べるのは、請求理由が共済金Aまたは共済金B(死亡による請求を除く)であり、かつ請求理由が発生した時点で60歳以上であること、さらに受取金額が一定額以上であることが条件です。具体的には、分割受取は300万円以上、併用は合計330万円以上(うち一括部分30万円以上・分割部分300万円以上)が必要です。それぞれ税務上の扱いは異なり、廃業や退職時に一括で受け取る場合は退職所得として扱われ、掛金の払込年数に応じた大きな控除が適用されるため、同じ金額を通常の事業所得として受け取るよりもはるかに有利な税率になります。分割で受け取る場合は公的年金等に係る雑所得として、これも独自の控除構造の対象です。掛金支払時の所得控除に加え、受取時の税負担が軽い点こそが、この制度の本当の魅力だと言えます。

注意点はありますか?

はい、あります。中途解約すると元本割れするリスクがある点です。廃業による解約ではなく、任意で解約した場合、掛金の払込期間が20年未満だと受取額が払込総額を下回ることがあり、特に加入初期はその傾向が顕著です。この制度は自由に引き出せる貯金ではなく、長期継続を前提に設計されています。積立残高を担保にした契約者貸付制度もありますが、これは緊急時の選択肢であって、いざという時のための資金源として最初から想定すべきものではありません。

iDeCoとはどう違いますか?

両者は併用可能で、実際に両方に加入している個人事業主も少なくありません。iDeCo(個人型確定拠出年金)は運用型の年金制度で、掛金上限や受取時の税制が異なり、原則60歳まで引き出せません。一方、小規模企業共済はよりシンプルで、市場の変動リスクは受けませんが、受取額が固定で保証されているわけではなく、掛金の払込実績や請求理由、そのときどきの想定利率によって変わります。また、固定の退職年齢ではなく廃業時にも受け取れる柔軟性があります。すでに青色申告特別控除を適用済みで、次の一手を探しているなら、両制度の掛金枠を比較検討する価値があります。

よくある質問

Q: 日本で短期賃貸事業を営んでいても小規模企業共済に加入できますか?

加入資格は事業の分類と規模によって決まり、不動産・宿泊関連の事業には独自の条件が設定されています。加入できると決めつけず、事前に中小機構または税理士に確認してください。

Q: 掛金の上限と下限はいくらですか?

月額1,000円から70,000円まで、500円単位で設定できます。収入の変化に応じて、後から金額を変更することも可能です。

Q: お金は退職まで完全に引き出せませんか?

完全にというわけではありません。積立残高を担保にした契約者貸付制度がありますが、20年未満での任意解約は元本割れのリスクがあるため、短期的な資金の出し入れを目的とした制度ではありません。


本記事は情報提供のみを目的としており、法律または税務上の助言を構成するものではありません。個別の状況については、専門家にご相談ください。