「どの都市で買えばいいですか?」――日本の民泊物件への投資を検討している方から、最もよく受ける質問がこれです。そして私の答えはいつも同じです。「何を重視するかによる」。東京・京都・大阪、日本の三大観光市場はそれぞれ、リスクとリターンのプロフィールが根本的に異なります。複数都市でゲストハウスを運営してきた経験と、数えきれないほどのスプレッドシートを眺めた夜を経て、今の私はこう整理しています。

まとめ

  • 東京は参入コストが最も高いが安定性も最高。需要が多様で、年間稼働率75〜85%が現実的な目標。
  • 京都はADRのポテンシャルが最大(ピーク時1泊2万〜4万円超)だが、季節変動が激しく、民泊規制も全国で最も厳格。
  • 大阪は初めての投資に最もバランスが良い。取得コストが低く(1,500万〜3,000万円台)、通年の需要が安定しており、許認可も実務的。
  • 民泊の年間180日上限は全国共通。365日営業には簡易宿所許可が必要で、消防設備や客室基準の要件がある。
  • どの都市でも、ピーク週の数字ではなく、年間通しての現実的な稼働率とOTA手数料控除後のNet ADRで試算することが重要。

なぜこの三都市なのか

東京・京都・大阪は、訪日外国人の宿泊の大部分を占め、外国人投資家が最初に注目する市場でもあります。そして、実際に運営してみると「観光で訪れる」のと「事業として動かす」のでは見え方がまったく違う、ということが分かってくる三都市でもあります。

JNTOの2025年データでは、訪日客数は引き続き過去最高水準で推移しており、2026年も同様の傾向が続いています。需要があるかどうか、という問いへの答えはもはや「ある」で確定しています。問題は、その需要が——取得コスト・運営上の制約・規制——を踏まえたとき、どれだけ利回りに変換されるか、という点です。

東京:取得コスト高め、安定したリターン、厳格なルール

東京は三都市の中で最も参入コストが高いものの、安定性という意味では最も信頼できる市場です。新宿・渋谷・墨田などの都心エリアで民泊に使える物件を買おうとすると、3,000万〜6,000万円程度の資金が必要になることも珍しくありません。ホテル・宿泊施設系の不動産は、立地の良いものでキャップレート4〜6%程度が相場感です。

その代わり東京が提供するのは、需要の多様性です。ビジネス旅行者、トランジット観光客、デジタルノマドや中長期滞在者――純粋なレジャー市場ではないため、季節変動が京都ほど激しくありません。適切に運営されたユニットなら、年間稼働率75〜85%は現実的な目標です。ADR(平均客室単価)は立地とグレードによりますが、1泊8,000円〜20,000円超の幅があります。

規制面は一長一短です。民泊は全国一律で年間180日の上限がかかり、東京の各区はさらに独自の制限を上乗せしているケースもあります(新宿区など)。365日フル稼働を目指すなら、旅館業法上の簡易宿所許可が必要になります。客室面積・防火設備の整備・区役所との折衝が伴いますが、不可能ではありません。

京都:高ADRと強い季節変動、そして強まる規制

京都は、数字の上では最も魅力的に見えます。そして、一番注意深く精査しなければいけない市場でもあります。

ADRのポテンシャルは三都市で最高水準です。桜シーズン(3月下旬〜4月上旬)と紅葉シーズン(11月)のピーク時には、クオリティの高い物件で1泊20,000〜40,000円以上の設定も可能です。この二つの繁忙期を上手く取れれば、短期間で相当な売上を出すことができます。

問題は、その間の閑散期です。レジャー特化型の物件は1〜2月に稼働率が大きく落ちます。年間利回りを計算するときは、ピーク週ではなく現実的なオフピークの数字を入れることが不可欠です。桜シーズンのADRを通年の平均として使ってしまうと、投資判断を大きく誤ります。

また、京都は全国でも最も民泊規制に積極的な自治体の一つです。オーバーツーリズムへの問題意識が政治的にも高く、住居専用地域での民泊営業は厳しく制限されています。住宅を購入して民泊転用を検討している場合は、用途地域と許認可の状況を東京・大阪以上に丁寧に確認する必要があります。

それでも、東山や錦周辺のような人気エリアでは「体験」にお金を出せる宿泊客が集まります。ライセンス体制を整えて季節変動をコントロールできるなら、京都のアップサイドは本物です。

大阪:オペレーターにやさしい市場

初めて民泊投資をする方には、私は大阪を勧めることが多いです。少なくとも、一棟目の投資として「計算が一番立てやすい」市場だと思っています。

まず取得コストが、同グレードの物件で比較すると東京・京都より明らかに低い。なんば・心斎橋・大阪駅周辺エリアは需要も強く、1,500万〜3,000万円程度の物件でも民泊として機能する選択肢があります。

需要の性格も変わってきています。かつては国内レジャーが中心でしたが、韓国・中国・東南アジアからの訪日客が急増した結果、大阪は完全な国際観光都市になりました。2025年の万博効果はインフラ整備に留まらず、宿泊需要の底上げという形で現在も続いています。ADRのピーク値は京都に及びませんが、年間を通じた稼働率の安定感は大阪に軍配が上がります。繁忙期の数週間だけでなく、通年での稼働をベースに考えられる市場です。

規制面では、大阪は三都市の中間に位置します。商業的なホスピタリティ文化が根付いているため、市当局も民泊許認可に対して比較的実務的なスタンスをとってきました。簡易宿所許可は取得可能ですが、消防設備や客室基準の要件はもちろんあります。

運営コストも、総じて大阪が有利です。清掃業者・メンテナンス業者・管理代行サービスの選択肢が豊富で、サービス価格が競争的です。京都は宿泊業界からの需要で外注費が押し上げられている部分があります。

数字を回す:本当に重要な変数

ROIをシミュレーションするときに、最終的な結果を動かす主な変数は四つです。(1) 取得費・初期投資の合計、(2) 年間稼働率の現実的な想定(ピーク週の稼働率ではなく通年で)、(3) OTA手数料控除後のNet ADR(Airbnbで15〜20%、Booking.comはそれ以上になることも)、(4) 清掃・管理・メンテナンス・許認可関連の運営コスト。

これらをまとめてシミュレーションできるよう、japan-investツールを作りました。宿泊税の計算、運営コスト比率の設定、複数の稼働率シナリオの比較ができます。投資決定の前に前提条件をストレステストするのに使ってみてください。

まとめると——東京は最も安定しているが取得コストの回収に時間がかかる。京都はポテンシャルが最も高いが変動リスクと規制リスクも最大。大阪は一棟目の投資として最もバランスが取れている——取得コストが低く、規制が扱いやすく、需要が安定しています。

どの都市も、しっかりしたビジネスケースがあれば悪い投資にはなりません。ただし、楽観シナリオだけでモデルを作り、現実的なシナリオを無視すれば、どの都市でも同じ結果になります。

よくある質問

Q: 初めて日本で民泊投資するなら、どの都市がおすすめですか?

大阪です。取得コストが東京や京都より明らかに低く、規制も小規模オペレーターにとって扱いやすく、需要が季節的な二つのピークに偏らず年間を通じて安定しています。最もビジネスケースを立てやすい市場です。

Q: 日本で民泊を年間通して運営できますか?

民泊(住宅宿泊事業法)の枠組みでは年間180日が上限です。365日フル稼働するには、旅館業法上の簡易宿所許可が必要になります。消防設備基準・最低客室面積のクリアと、管轄の区役所・市役所の許可プロセスを経る必要があります。達成可能ですが、時間と初期費用が追加でかかります。

Q: OTA手数料はどのくらい利益を圧迫しますか?

Airbnbで15〜20%、Booking.comは表示設定次第でさらに高くなることもあります。ROIを計算するときは、必ず手数料控除後のNet ADRを使ってください。1泊あたりの実際の収入は表示価格よりかなり少なくなります。ざっくり計算で最もよくあるミスの一つです。


本記事は情報提供を目的としており、法律・財務・税務上のアドバイスを構成するものではありません。不動産投資には元本損失を含むリスクが伴います。具体的な状況については、資格を持つ専門家にご相談ください。