民泊・短期賃貸を複数物件で運営して、実際に使い続けているツールの話
目次
Airbnbの物件が1件なら、スプレッドシートとやる気でなんとかなる。でも東京で複数の物件を同時に運営するとなると話が変わってくる。OTAのリスティング管理、価格カレンダー、税務対応、メンテナンス依頼——それぞれに独立した仕組みが必要になる。システムを作るか、溺れるかのどちらかだ。
ここ数年、BenStayでさまざまなツールを試してきた。1ヶ月で使うのをやめたものもある。いくつかは今も運営の根幹を支えている。そして、日本特有の課題を解決するものがどこにもなかったので、自分たちで開発したツールもある。正直に書いていく。
まとめ
- 複数OTA運営にはチャンネルマネージャーが必須。ただし、多くの海外製ツールは国内OTA(じゃらん・楽天トラベル)との連携が弱い点に注意が必要。
- 動的価格設定ツールは有効だが、ゴールデンウィーク・お盆・桜シーズンといった日本固有の需要パターンに合わせた手動チューニングが必要。
- 領収書・経費管理は民泊運営の地味な悩みどころ——Reshitoを自社開発した背景もここにある。
- 外国籍の運営者にとって、日本語での業者見積もりの取得・比較は情報の非対称性が大きい問題。Aimitsuはそれを解消するために作った。
- 複数都市にまたがる宿泊税の計算は自動化が必要——オープンソースのjapan-stay-taxで対応している。
日々の業務は実際どんな感じか?
毎朝の基本的な作業は決まっている。新規予約の確認、ゲストメッセージへの対応、価格に異常がないかのチェック、そしてメンテナンス依頼の確認。書き出すとシンプルに見えるが、2つのOTAにそれぞれ掲載している物件が6件あると、その量はあっという間に膨れ上がる。深夜2時にゲストから問い合わせが来ることもある。だから自動化が必要になる。
最初に一元管理したのがチャンネル管理だった。
日本での運営に合うチャンネルマネージャーはどれか?
どのチャンネルマネージャーが最適かは、どのOTAを使っているかで変わる。日本における主要プラットフォームは、AirbnbとBooking.com、そして国内OTA(じゃらん・楽天トラベルなど、TemairázuやAirhostのような予約エンジン経由)だ。海外製のチャンネルマネージャーのほとんどはAirbnbとBooking.comには対応しているが、国内OTAとの連携は弱いか、そもそも対応していないことが多い。これは重要なポイントで、とくに日本人ゲストを対象とした都市部の物件では、国内OTA経由の予約が無視できない比率を占める。
うちの構成は、Airbnb・Booking.com用に海外製チャンネルマネージャーを使いつつ、国内OTA管理はAirhostで対応するという組み合わせだ。理想的なワンストップ解決策ではないが、現状の市場環境ではこれが最もうまく機能する。AirbnbとBooking.comだけで運営しているなら、GuestyかHostawayが安定していておすすめだ。
専任のレベニューマネージャーなしで価格設定はどう管理するか?
小規模運営者にレベニューマネージャーを専任で雇う余裕はない。PriceLabsやWheelhouseといった動的価格設定ツールはアメリカやヨーロッパ市場向けに設計されており、日本固有の需要シグナル——ゴールデンウィーク、お盆、桜シーズン、そして7〜8月の「国際客は減るが国内旅行は増える」という動き——には手動でのチューニングが必要になる。
私のアプローチはこうだ。動的ツールをベースラインとして使いながら、物件ごとに下限・上限価格を設定し、閑散期は週次でカレンダーを目視確認する。ツールが日常的な調整をこなし、私は判断が必要な場面だけ介入する。物件のADRが現実的な稼働率想定に対して妥当かどうかの確認には、自社のjapan-investで物件ごとの収益ベンチマークをとっている。
領収書と経費管理はどうしているか?
これは、日本で小規模な宿泊ビジネスを運営する上で地味に面倒な部分だ。ホームセンターでの購入、清掃用品の補充、業者への支払い、水道光熱費——領収書は日々積み重なっていく。整理できていないと、確定申告の時期に銀行明細を遡って3日かけて経費を再構築することになる。
日本の会計ソフトは存在するが、大規模事業者向けだったり、使いこなすのに相当な日本語力が必要だったりする。そこで自分たちで作ったのがReshitoだ。日本語の領収書(手書きも含む)をAIで読み取り、必要な情報を抽出してfreeeや青色申告に対応した形式で仕分けするツールだ。BenStay自身の経費管理でも使っており、年度末の作業時間が大幅に減った。
日本語が堪能でない運営者はどうやって業者見積もりを取るか?
日本での物件メンテナンスは、英語が話せない業者と交渉することがほとんどだ。同じ作業でも見積もり金額が3倍異なることもある。外国籍の運営者にとっては、価格の妥当性と作業範囲の両方を理解しながら比較するのは二重の難しさがある。
この問題を解消するために作ったのがAimitsuだ。必要な作業内容を平易な言葉で入力すると、複数の業者に送れる明確な日本語の作業仕様書を生成する。そして受け取った見積もりを並べて比較し、作業範囲の違いや気になる点を指摘してくれる。現地感覚の代わりにはならないが、外国人運営者が直面する情報の非対称性を大きく下げてくれる。
複数都市の宿泊税コンプライアンスにはどう対応するか?
日本の宿泊税は、都市ごとに税率・課税しきい値・計算方式(1人あたり vs 1泊あたり)が異なっていて複雑だ。東京・大阪・京都など複数都市に物件を持つ場合、手動での管理はミスのリスクが高い。
この計算ロジックをオープンソースのライブラリとして公開したのがjapan-stay-taxだ。各都市のルール変更に合わせて更新されており、npmパッケージとシンプルなAPIの両方で利用できる。自社の予約バックエンドに組み込んで、宿泊ごとの宿泊税を自動計算している。
ツール選びの根本的な考え方
シンプルに保つ。ただし、核心的な部分はきちんと機能させる。使い続けているツールに共通しているのは、特定の繰り返し発生する課題を解決しているという点だ——機能が多いものではなく、痛みのある問題を的確に解くものが残った。チャンネル管理、価格設定、領収書管理、見積もり比較、宿泊税——この5領域にツール投資を集中している。それ以外(ゲストとのコミュニケーション、メンテナンススケジュール、レビュー対応)は、Slack・シンプルなチェックリスト・OTAの直接メッセージで対応している。
正直に言えば、多くの宿泊業向けソフトウェアはアメリカやイギリス市場向けに設計されており、日本に当て込んだものにすぎない。日本でそれなりの規模で運営するなら、必ずどこかにギャップが出る。自分で作るか、すでに作った人を見つけるかだ。
よくある質問
Q: AirbnbとじゃらんなどのOTAを両方使う運営者に合ったチャンネルマネージャーは?
現時点では、どちらも完璧にカバーするツールは存在しない。国内OTA(じゃらん・楽天トラベル/Temairazu経由)との連携はAirhostが強い。AirbnbとBooking.comにはGuestyかHostawayが安定しておりサポートも充実している。複数OTAで本格的に運営している事業者のほとんどは、2つのシステムを組み合わせて使っている。市場がまだ完全には解決できていない課題だ。
Q: 1〜3物件の小規模運営者に動的価格設定ツールは必要か?
おすすめだが、注意点がある。PriceLabsのような動的ツールは、日本特有の需要に対応するには手動でのチューニングが必要だ。初期設定のまま使うと、国内祝日や桜シーズン・ゴールデンウィークの需要を適切に反映しないことがある。設定に時間を割ける前提があれば、固定価格と比べて収益の改善が期待できる。
Q: 民泊・宿泊業の青色申告はどう進めているか?
freeeをメインの会計プラットフォームとして使い、Reshitoでスキャンした領収書をそこに流し込んでいる。宿泊税はゲストから預かって自治体に納める預り金なので、別途管理している。年次申告を楽にする最大のポイントは、最初から物件別に収支が分かれるようにチャートオブアカウントを設定しておくことだ。
本記事は情報提供を目的としており、法的・税務・会計に関するアドバイスを構成するものではありません。具体的な状況については、資格を持つ専門家にご相談ください。
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