JNTOの訪日客数は過去最高なのに、なぜ私の予約は増えないのか
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毎月JNTOが訪日客数を発表するたびに、ホスピタリティ業界のSNSは沸き立ちます。過去最高。新記録。右肩上がりのグラフ。そして同じタイミングで、新宿のゲストハウスオーナーが来月のカレンダーを眺めながら、40%が空白のまま途方に暮れている。
私自身がそのオーナーだったことがあります。同じ状況を経験した運営者とも、何十人も話してきました。
まとめ
- JNTOの全国訪日客数と、あなたの物件の稼働率は別々に動く。全国の数字が好調でも、自分の予約が増えるとは限らない。
- よくある原因は「OTAのランキング低下」「価格ポジションのずれ」「掲載コンテンツの質」「物件と主要インバウンド市場のミスマッチ」の4つ。
- この4点を体系的に診断することが、予約ダッシュボードをリロードし続けるより有効。
- マクロのトレンドが個別の予約に波及するまでには4〜8週間かかる。最初の1週間で結論を出さない。
- 掲載文・写真・価格を少し手直しするだけで、「波が来るのを待つ」より早く稼働率が動くことがある。
なぜ全国の訪日統計があなたの物件の話ではないのか
2025年、日本を訪れた外国人旅行者は3,600万人を超え、過去最高を記録しました。その同じ年、東京都心で物件を運営するオーナーの中に、稼働率が65%に留まっている人がいる一方で、東京のホテル全体では85%超が報告されていました。全国統計は平均値であり、平均値は大きなばらつきを隠しています。
たとえばこういうことです。ある月に300万人の韓国人が日本を訪れたとして(最近は珍しくない数字です)、その多くが大阪に滞在し、Booking.comで韓国語対応フィルターをかけて宿を探しているとしたら——AirbnbにしかリスティングがなくKorean語の説明文もない浅草の物件には、その波はほとんど届きません。旅行者はいる。需要は本物。でも、需要とあなたの予約の間には、OTAのアルゴリズム・掲載品質・価格シグナル・ゲスト市場との相性という、見えにくいパイプラインが存在しています。
そのパイプラインのどこで詰まっているかを特定することが、すべての出発点です。
OTAのランキングがあなたに不利に働いていないか?
AirbnbやBooking.comでの検索順位は、需要があなたの物件に届くかどうかを左右する最大の要因のひとつです。そしてそれは、通知もなくサイレントに落ちることがあります。返信の遅れが続いた、レビュースコアが少し下がった、キャンセルが増えた、カレンダーを更新していない——こうした積み重ねが、検索順位を押し下げます。
対策は地道です。まずリスティングのパフォーマンスダッシュボードを確認する(Airbnbは専用タブあり、Booking.comはPulseセクション)。予約数だけでなく、インプレッション数(表示回数)を見てください。インプレッションが低下しているなら、それは需要の問題ではなく、視認性の問題です。価格を更新する、最低宿泊数を調整する、問い合わせへの返信を速める——こうした「アクティブなホスト」行動を1〜2週間続けると、アルゴリズムが反応することが多いです。
今の市場に対して価格が正しいポジションになっているか?
2024年に競争力のあった価格が、2026年には間違っている可能性があります——どちらの方向にも。円高が進んでいる局面では、コスト意識の高いアジア系旅行者にとって、以前ほどの割安感がなくなっているかもしれません。逆に近隣に新しい物件ができて相場が下がっているのに、気づかず割高なままになっているケースも珍しくありません。
週1回のコンパチェック(競合調査)を習慣にするといいです。Airbnb・Booking.comで自分と似た物件を今後30日間で検索し、自分の価格が競合の中でどの位置にあるか確認する。品質に見合った価格帯の上位・中位・下位のどこにいるか?7〜10日間の短期間で価格を変えてみて、コンバージョンへの影響を観察することも有効です。
BenStayでは物件ごとのメンテナンスコストを追跡しています。維持費がそのまま「最低でも回収しなければならない1泊あたりの金額」の床になるからです。日本では季節によって業者の相場が上がることがあり、そうすると価格設定も連動させる必要があります。Aimitsuで見積もりをベンチマークすることで、過払いを防ぎ、競争力のある価格帯を維持しやすくなっています。
写真と掲載文は本当に機能しているか?
ここは正直な自己評価が必要な部分です。2026年のゲストは、AI推薦も混じった候補リストを数秒でスクロールしています。最初の1枚でスクロールを止められなければ、存在しないも同然です。
メイン写真を最後に更新したのはいつですか?「最初に掲載したとき」という答えなら、見直す価値があります。桜の季節なら窓から花が見えるショット、冬ならこたつのある温かな室内写真——旬の写真は、同じ季節の旅行者のコンバージョンを高めます。「このリスティングは今も管理が行き届いている」というシグナルでもあります。
掲載文もますます重要になっています。AIアシスタントや旅行系検索ツールが宿泊候補を自動でまとめて提示するようになった現在、周辺エリアの特徴・交通アクセス・その物件ならではの魅力を具体的に書いた説明文ほど、サジェストに載りやすい傾向があります。
物件タイプが「今来ている市場」に合っているか?
これが4つの中で最も修正に時間のかかる要素ですが、現状認識として重要です。現在の日本のインバウンドは、韓国・台湾からの旅行者が中心です(短期滞在・週末集中・カップルや少人数グループ)。中国人FIT旅行者も着実に戻っています。欧米・オセアニアからの長距離旅行者は増加中ですが、総数ではまだ少数派です。
8人以上のファミリー向けに設定した物件は、今の主流の予約パターンに乗りにくい状態になっています。英語のみの説明文は、最大の旅行者市場に対してほぼ非表示も同然です。韓国語や繁体字中国語でひと言ポイントを加える、週末だけ最低宿泊数を1〜2泊に緩める——こうした小さな調整が、マクロのトレンドが変わるのを待つより早く、予約の流れを変えることがあります。
素早く診断できる4点チェックリスト
「市場が弱い」と結論づける前に、以下の4点を確認してください:
- OTAのインプレッション数 — 横ばいか下落していないか?下がっているなら需要ではなくアルゴリズムの問題。
- 価格ポジション — 今の市場環境・競合水準に対して、自分の品質に見合った価格帯に収まっているか?
- 掲載の鮮度 — 写真は過去12ヶ月以内に更新されているか?メイン写真は季節感があるか?
- 市場適合性 — 説明文・最低宿泊数・定員が、今来ている旅行者層に合っているか?
4点すべて問題なくて稼働率が目標に届かないなら、その時点でやっと「自分のセグメントの需要が本当に弱い」という仮説が正当化されます。そこで初めて、JNTOの詳細データ(国籍別・都道府県別・訪問目的別)が中長期の計画に役立ちます。
よくある質問
Q: 全国の訪日客数の変化が、個別の物件予約に反映されるまでどのくらいかかりますか?
マクロのインバウンドトレンドが個別のOTA予約行動に波及するまでには、一般的に4〜8週間かかります。今日発表されたJNTOの数字は、すでに日本にいる旅行者か、直近の旅行を予約中の人の行動を反映しています。ゴールデンウィークや紅葉シーズンのような季節ピークは、2〜3ヶ月前から検索・予約行動に変化が出てきます。
Q: Airbnbのインプレッションは良好なのに、コンバージョン率が低い。何が原因として多いですか?
インプレッションがあってコンバージョンが低い場合、ほぼ確実に「価格」「写真」「掲載文」のいずれかが原因です。見てもらっているのに選ばれていない状態です。コンバージョンが低い日程について、競合と価格比較を行い、最初の5枚の写真を業界外の人に見せて第一印象を聞いてみてください。それで問題がなければ、キャンセルポリシーも確認を。厳しすぎるポリシーはAirbnbでは特にコンバージョンを下げる傾向があります。
Q: 複数のOTAに掲載すべきでしょうか?
基本的にはYesです。ただし注意点があります。Airbnb・Booking.com・そして国内需要向けにじゃらんや楽天トラベルなど1〜2つの国内プラットフォームに掲載することで、旅行者セグメントのカバレッジが広がります。最大のリスクはカレンダー連携の失敗によるダブルブッキングです。複数プラットフォームに展開する前に、双方向同期が安定しているチャネルマネージャーまたはPMSを必ず導入してください。
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