税理士は必要? 民泊・ゲストハウス運営者とフリーランスのための税理士の選び方
目次
毎年秋になると、コーヒーを飲みながら決まって聞かれる質問があります。「もう全部、税理士さんに頼んだほうがいいですかね?」。2回目の確定申告を控えたフリーランスの方だったり、ゲストハウスを2軒目に増やしたら領収書の箱も2つに増えていた、という方だったりします。
正直に答えると「場合によります」。ただ、それだけでは何の役にも立たないので、この記事では何によって変わるのかを整理します。日本の税理士が実際に何をしてくれるのか、報酬はどういう仕組みになっていることが多いのか、そして自分でできる作業にまでお金を払わないための見積もりの比べ方です。
まとめ
- 税理士法により、法令上の例外を除き、他人のために税務代理、税務書類の作成、個別の税務相談を業として(反復・継続して)行えるのは、税理士と税理士法人だけです。有償か無償かは問いません。
- 収入源がひとつで資産も少ない個人事業主なら、自分で申告できるケースがほとんどです。ただし、不動産の減価償却、複数自治体の宿泊税、従業員の雇用、法人化が加わると一気に複雑になります。
- 報酬は主に「顧問料」「決算料(申告料)」「記帳代行」の3つで構成されます。記帳代行は、ほかの2つとは別に追加料金になることが多い部分です。
- 帳簿を整えておくと処理の手間が減り、合意した業務範囲や料金体系によっては報酬が下がることもあります。領収書の箱を持ち込むより、分類済みのデータを渡すほうが、税理士側の作業は少なく済むのが普通です。
- 見積もりは金額ではなく業務範囲で比べましょう。何が含まれていて何が別料金か、面談や質問は何回まで対応してもらえるかを確認します。
税理士は具体的に何をしてくれるのか?
税理士は国家資格を持つ税務の専門家で、申告書の作成・提出、税務調査での代理、個別の税務相談を行うことが法律上認められています。この点は特に重要です。税理士法により、法令上の例外を除き、これらを他人のために業として行えるのは税理士と税理士法人だけで、報酬の有無は関係ありません。「業として」には、反復・継続して行う場合だけでなく、反復・継続する意思をもって行う場合も含まれます。つまり、「数字に強い知り合い」が他人の申告を引き受けている場合、有償でも無償でもグレーゾーンにはなりません。例外にあたらない限り、税理士法で禁止されている行為です。
小規模な事業者が税理士に依頼する内容は、主に次のとおりです。
- 確定申告(個人事業主)または法人税申告の作成・提出
- 消費税の申告(インボイス制度が始まってから重要度が増しています)
- 記帳のチェック、または記帳そのもの
- 減価償却、経費計上、計上時期に関するアドバイス
- 税務調査の立ち会い・対応
税理士が本当に必要になるのはどんなときか?
状況がシンプルなら、税理士はおそらく要りません。たとえば、フリーランスの収入がひとつだけで、従業員も不動産もなく、一般的な会計ソフトで青色申告をしているようなケースです。e-Taxはかなり使いやすくなりましたし、税務署も2〜3月を中心に無料の申告相談を実施しています。
私の経験では、分かれ目になるのは次のようなときです。
- 法人化したとき:法人税、法人住民税・事業税、消費税と、法人の申告は難しさの次元が違います。周りの合同会社・株式会社の経営者も、ほとんどが税理士に依頼しています。
- 宿泊施設の不動産を所有しているとき:建物・設備・家具の減価償却の区分、改修が資本的支出か修繕費かの判断、将来売却するときの税金など、小さなミスが何年にもわたって響く論点が多くあります。
- 複数の自治体で運営しているとき:宿泊税の仕組みは都道府県や市町村ごとに違います。東京都の場合、2027年3月31日までは旅館・ホテルの宿泊が対象です。1人1泊あたりの宿泊料金が1万円以上1万5,000円未満なら100円、1万5,000円以上なら200円で、1万円未満は課税されません。現行制度では民泊と簡易宿所は対象外です。2027年4月1日からは簡易宿所と民泊にも対象が広がり、税額は宿泊料金(都の定義による)の3%に変わります。1万3,000円未満は課税されません。京都市は、宿泊料金がどれだけ低くても有償の宿泊を原則として課税対象とし、料金帯ごとの段階制をとっています。修学旅行の参加者・引率者など、一定の要件を満たす場合は免除されます。大阪府も非課税ラインのある段階制です。納入そのものを税理士が担当するとは限りませんが、会計上は正しく反映させる必要があります。
- 消費税の課税事業者になる(またはなる見込みがある)とき、あるいは適格請求書発行事業者に登録するとき
- 自分の時間をほかに使ったほうが価値が高いとき:繁忙期に記帳だけで月に週末2回分が消えるなら、外注したほうが得になることもあります。
税理士報酬はどういう仕組みになっているのか?
多くの税理士事務所は、次の3つを組み合わせて報酬を設定しています。
- 顧問料(月額):随時の質問対応、定期的なレビュー、場合によっては月次の帳簿チェック
- 決算料・申告料:決算と申告書の作成・提出にかかる年1回の費用。顧問料の数か月分に設定されていることが多いです。
- 記帳代行:取引の入力を代行するサービス。料金は仕訳数に応じて決まることが多く、取引が増えるにつれてかさんでいきます。
個人事業主向けに、年1回整理済みの帳簿を渡せば申告だけを引き受ける「スポット契約」を用意している事務所もあれば、顧問契約しか受けない事務所もあります。料金は地域や事務所の規模、案件の複雑さによって大きく変わるので、確かな金額は自分のケースで取った見積もりしかありません。
私自身が見てきた見積もりでは、帳簿の状態で料金がはっきり変わりました。分類・電子化済みの経費データを持ってくる人と、感熱紙のレシートを紙袋いっぱいに持ってくる人とでは、税理士が見積もる「仕事」がそもそも違います。
払いすぎずに見積もりを比較するには?
まず業務範囲で比べ、金額はその後です。これは、物件メンテナンスで工務店の見積もりを比べたときに学んだことと同じです。ある業者の1行が、別の業者では15行に分かれている。税理士の見積もりも、業務の切り分け方が事務所ごとに違います。合計金額を比べる前に、各事務所に次のことを確認しましょう。
- 決算料は顧問料に含まれるのか、別途請求なのか
- 消費税の申告は含まれるか
- 必要な場合、償却資産の申告は含まれるか(1月1日時点で所有している一定の事業用資産が対象です)
- 給与を支払っている場合、年末調整は含まれるか
- 面談は年に何回か。メールやチャットでの質問は無制限か
- 税務調査の立ち会いは込みか、日当で別料金か
- どの形式の帳簿データなら受け付けてもらえるか。使っている会計ソフトのエクスポートに対応しているか
表面上の金額が近い2つの見積もりでも、これらの回答を並べてみるとかなり違って見えるはずです。何でも項目ごとに追加請求される場合、一番安く見えた見積もりが結果的に一番高くつくこともあります。
税理士費用を抑えるにはどうすればいいか?
費用を抑える現実的な方法のひとつは、地味な作業、つまり領収書をその場で取り込んで分類することを自分でやることです。
私たちがReshitoを作った理由のひとつもここにあります。複数の物件で自分たちの領収書が溜まっていき、「後でまとめて整理する」コストが結局税理士の請求書に上乗せされていました。領収書をスキャンして分類しておけば記帳が楽になり、自分で処理する場合も税理士に任せる場合も手間を減らせます。ただし、保存の問題はこれとは別です。紙の原本は、スキャナ保存の要件を満たしていない限り保管しておきましょう。電子で受け取った取引情報は、電子取引のルールに沿って保存する必要があります。データ項目を読み取っただけで要件を満たしたことにはなりません。
ほかにも、次のような工夫が効きます。
- 事業用と個人用の口座をきっちり分ける。混ざったものを仕分けるのも請求対象の作業時間です。
- OTAの入金レポートは2月にまとめて作り直すのではなく、毎月エクスポートしておく。
- 取得日・取得価額・内容を書いた簡単な固定資産リストを作っておき、減価償却の時期に過去を掘り返さなくて済むようにする。
- 「こちらでやってほしい作業はありますか」と税理士に聞いてみる。入力作業をこちらで引き受ければ、報酬を下げてくれる事務所もあります。
よくある質問
Q: 外国人がゲストハウスを運営している場合でも、確定申告を自分でできますか?
できます。居住者が自分で申告することに制限はなく、e-Taxにも対応しています。自分でやる「べき」かどうかは複雑さ次第です。不動産の減価償却や複数自治体の宿泊税は、専門家への相談を検討する理由の例です。
Q: 税理士資格のない「税務コンサルタント」に申告を頼んでも大丈夫ですか?
原則として認められていません。法令上の例外を除き、他人の申告書作成や個別の税務相談を業として行えるのは、税理士と税理士法人(および限られた場合に一定の有資格者)だけで、有償か無償かは問いません。依頼する前に資格を確認しましょう。登録している税理士は、日本税理士会連合会の検索サービスで調べられます。
Q: 税理士を探し始めるのにいい時期はいつですか?
年末までです。1〜3月は税理士事務所の繁忙期で、シーズン終盤には新規の確定申告を受け付けない事務所もあります。10〜11月なら、いくつかの事務所をじっくり比べる余裕があります。
本記事は情報提供のみを目的としており、法律または税務上の助言を構成するものではありません。具体的な状況については、資格を持つ専門家にご相談ください。
コメント