ゴールデンウィークが終わり、桜の季節も過ぎた6月は、自分の料金設定を正直に見直すのに良いタイミングです。梅雨に入ると、海沿いの物件やサマーフェスティバル圏内でなければ、稼働率が思うように伸びない時期でもあります。

毎年この時期に同じパターンが繰り返されます。焦ったオーナーが宿泊料金を大幅に下げ、OTAのアルゴリズムにも宿泊者にも「この物件は安くなる」という印象を与えてしまう。そして次のピーク期に「なぜADRが戻らないのか」と悩む——。

もっとスマートな方法があります。

まとめ

  • 日本の民泊市場には予測可能な閑散期がある:2月、梅雨の6月中旬、11月の紅葉後。
  • 宿泊料金の値下げは最初に使うべきレバーではなく、多くの場合は誤った選択。
  • 重要な指標はRevPAR(販売可能な1泊あたり収益)であり、稼働率ではない。
  • 国内旅行者、長期滞在者、地元イベント需要が閑散期の三大需要源。
  • 価格の下限(フロア)を設定し、値引きより付加価値(長期割引、柔軟なチェックイン)を先に活用する。

日本における「閑散期」とは何か?

日本の訪日外国人旅行は、桜(3月下旬〜4月中旬)、ゴールデンウィーク(4月下旬〜5月上旬)、夏まつり・お盆(7月下旬〜8月中旬)、紅葉(10月中旬〜11月下旬)という季節イベントに大きく左右されます。これらの期間を外れると、国際需要は顕著に落ち込みます。

主な閑散期をまとめると:

  • 2月:正月明け、桜前の最も寒い時期。スキーエリア以外の国内旅行需要も低い。
  • 6月中旬〜7月上旬:梅雨。訪日外国人は雨を気にしないが、国内レジャー需要が落ちる。
  • 11月下旬〜12月上旬:紅葉後の端境期。ビジネス需要は伸びるが、観光客は減少。

これらは突然やってくるわけではなく、何ヶ月も前から予測できます。問題は、その情報をどう活かすかです。

なぜ料金を下げることが最初の選択肢として間違いなのか

「空き部屋があるなら料金を下げて埋める」という発想は自然ですが、いくつかの点で逆効果になりえます。

まず、OTAのランキングアルゴリズム(特にAirbnb)は、あなたの価格履歴と市場比較での承認率を参照します。閑散期に毎回値下げを繰り返すと、アルゴリズムはあなたの物件を「低価格帯」と学習します。これはピーク期の露出にも悪影響を与えます。

次に、宿泊者は価格を基準にして価値判断をします。2月に1泊¥6,000で泊まったゲストが桜シーズンに¥14,000を見ると、価格差が大きく感じられ、問い合わせから予約への転換率が下がります。

そして最も重要な点:稼働率とRevPARは別物です。¥4,000で100%稼働するより、¥8,500で60%稼働する方が収益は高い。指標を間違えないことが大切です。

料金を変える前に試すべきこと

1. 最低泊数の調整

閑散期は最低泊数を短くすることで、平日に移動するビジネス客や直前予約の国内旅行者を取り込めます。2泊最低から1泊最低に変えるだけで、料金を変えずに稼働率を改善できるケースは多いです。

反対に、週単位の割引(通常10〜15%)を設定して長期滞在者を誘引することも有効です。デジタルノマドや研究者、部屋探し中の人など、ピーク期とバッティングしない需要層が閑散期に増えます。

2. 国内旅行者へのアプローチを強化する

訪日外国人は英語のリスティングに慣れていますが、国内旅行者の多くはじゃらんや楽天トラベルを使います。日本語のリスティングが弱ければ、閑散期こそ整える好機です。

国内ゲストが求めるものも異なります:スリッパ、炊飯器、緑茶、日本語のWiFi説明書。アメニティと写真を少し調整するだけで、国内需要へのアピール力が大きく変わります。

3. 地元イベント需要を掘り起こす

JNTOの統計には載らなくても、確実に稼働を押し上げるイベントは各地にあります:大学の卒業式、産業展示会、地域マラソン、音楽フェスティバル。東京ドームのコンサート、幕張メッセの展示会、パシフィコ横浜の学会——それぞれが短期的な需要の波を作ります。

物件から30分圏内のイベントカレンダーを作りましょう。該当日はピーク料金を設定。11月の火曜日でも、コンベンションがあればゴールデンウィーク並みに稼げることがあります。

4. 中期滞在の活用

日本では「中期滞在」(2〜4週間)は短期賃貸と月極の間のグレーゾーンに存在します。ライセンスの種類によっては、1泊換算で少し割引した料金で2〜4週間の予約を受け付けることも可能です。

BenStayでは2月と11月下旬にこのアプローチを活用してきました。3週間の1件の予約が、バラバラな21泊分の予約よりも収益・運営両面で優れているケースは珍しくありません。

価格の下限(フロア)を設定して守る

上記のレバーを使い切ったら、次は実際の下限価格を考えます。下限は、清掃費、OTAの手数料(通常12〜20%)、消耗品、固定費の按分、そして利益を含めた「これ以下では受けない」ラインです。

1泊あたりのオールイン原価が¥4,500なら、¥5,000での提供は戦略ではなくコスト割れ覚悟のホスティングです。

目安:下限は1泊あたり運営コストの1.5〜2倍程度。それを下回るなら、空き部屋のまま物件の消耗を抑えた方がよい判断かもしれません。

BenStayでは価格自動化ツール(現在はAirhostにカスタムのフロアルールを組み合わせ)を使い、閑散期の料金設定を手動介入なしで管理しています。フロア価格を季節ごとに見直し、その範囲内はオートメーションに任せる仕組みです。

ポジショニングの罠

最後に触れておきたいのが「空き部屋を恐れての値下げ」という心理です。閑散期に安く設定し続けると、価格だけを見て予約するゲスト層を引き寄せがちになります。このような層はレビューが低くなりやすく、対応工数も増え、リピーターになりにくい。

閑散期の料金設定は、ゲストの選別でもあります。物件の価値を理解して予約するゲストが来る水準に設定しましょう。2月に難しい予約を断っても失うものは少ない。桜シーズンのピーク週に断るよりずっとリスクは低いのです。

閑散期は、最低泊数を少し上げ、ハウスルールを整え、問い合わせに対してより慎重に対応する良いタイミングでもあります。

よくある質問

Q:閑散期にどれくらい値引きすべきですか?

一般的な目安として、肩シーズン料金から15〜25%の範囲が「ソフト割引」の適正ゾーンです。それ以上の値引きは「空き部屋への焦り」と市場に読まれるリスクがあります。それより先に、最低泊数の変更や別プラットフォームの活用、あるいは空き部屋を受け入れることを検討した方がよい場面も多いです。

Q:極端に閑散な時期はリスティングを一時停止すべきですか?

最終手段としては選択肢ですが、基本的には避けた方が賢明です。リスティングを停止(またはAirbnbのスヌーズ機能を使用)すると、アルゴリズムが非アクティブと判断し、再開後のランキングに悪影響を与えることがあります。代わりに公開日程を短い期間に絞る方法の方が、リスティングをアクティブに保ちながら露出をコントロールできます。

Q:梅雨は実際にどれほど予約に影響しますか?

ゲストの層によって大きく異なります。東南アジアやヨーロッパからの訪日外国人は雨を気にしないことが多く、6月の稼働率はそれほど落ちないケースもあります。国内レジャー客はより影響を受けます。実際の判断は、ご自身の稼働履歴を確認してから。英語コンテンツで国際ゲスト向けに最適化されているなら、梅雨の影響は全体統計ほど大きくないかもしれません。


本記事は情報提供を目的としており、法的・税務的アドバイスを構成するものではありません。具体的な状況については、有資格の専門家にご相談ください。