よく見るシナリオがある。8月中旬にカレンダーを確認すると、一番稼げるはずの日程がまだ空いている。焦って値段を下げ、チェックイン1週間前にやっと埋まる——本来取れたはずの価格より30%安く。問題は需要ではないことが多い。「いつ」その需要が来るのかを把握していないことが問題だ。

予約リードタイム——予約日からチェックイン日までの日数——は、短期賃貸の価格設定において最も活用されていないレバーのひとつだ。リードタイムの傾向をつかめば、いつ値引きすべきか、いつ強気に保つべきかで悩む必要がなくなる。

まとめ

  • 当社ポートフォリオでは、国内の日本人ゲストは1〜2週間前に予約することが多く、欧米の長距離旅行者は6〜12週間前に予約する傾向がある。これらの目安は自社の予約データから算出することを推奨する。
  • 当社ポートフォリオでは、韓国・台湾からのゲストはその中間で、2〜4週間前が多い。週末旅行は数日前に予約されることもある。
  • ゴールデンウィーク・お盆・桜のシーズンなどピーク期は、当社物件では海外ゲストがさらに早く(8〜16週前)予約する傾向があり、国内ゲストも例年より早く予約する。
  • チェックイン直前(0〜7日前)でも空きがある場合は、価格ポジションや掲載・チャネルの問題を示している可能性がある。値下げ前に市場需要・競合物件・OTAの露出・最低泊数設定を確認すること。
  • 当社ポートフォリオでは、Booking.comはAirbnbと比べて短リードタイムの予約を集めやすい傾向がある。自社のチャネルデータで検証することを勧める。

予約リードタイムとは何か、なぜ重要なのか?

予約リードタイムとは、予約が入った日からゲストがチェックインする日までの日数のことだ。今日予約が入って、チェックインが10週間後であればリードタイムは70日。今夜予約が入って、明日チェックインであればリードタイムは1日になる。

これが価格設定に重要な理由は、「90日前の最適価格」と「3日前の最適価格」は根本的に異なるからだ。自分のゲストがいつ予約するかを把握しておけば、早期に適切な価格で価値を取りにいき、直前在庫については感情ではなく戦略で判断できるようになる。

ゲストセグメント別の予約行動

予約タイミングはゲストの出身国によって大きく異なる。日本のインバウンド市場は多様なため、一括りに語るのは危険だ。

国内日本人ゲストは、東京・大阪の多くの物件において最も短いリードタイムを持つ層だ。週末旅行——名古屋から東京へのカップル旅、親戚訪問の家族——は当社の経験では3〜14日前に決めて予約することが多い。国内長距離(本州から沖縄・北海道へ)は多少早まるが、それでも海外旅行者より短い。例外はお盆や正月などのピーク期で、このときは国内ゲストも4〜8週間前に予約するケースが増える。

韓国・台湾からのゲストはJNTOの2026年1〜5月データによると韓国が488万8,000人で訪日外客数1位、台湾が330万1,800人で2位となっている(2025年通年では韓国・中国・台湾の順)。当社ポートフォリオでは、どちらも中程度のリードタイムで、おおむね2〜4週間前が多い。韓国ゲストは特に短い週末旅行(金〜日)が多く、5〜10日前に予約されることも珍しくない。台湾ゲストは若干長め、特に5〜7泊の滞在では早めに予約が入る傾向がある。どちらもセールや割引への感応度が高いため、深い直前割引は「待てば安くなる」という学習を促してしまうリスクがある。

中国からのゲストはかつて団体ツアー中心だったためリードタイムが長かった。JNTOによれば、中国人訪日客における個人旅行は2016年以降、団体旅行を上回っており、当社ポートフォリオではそのシフトが予約窓の短縮に対応している。現在は3〜6週間前が目安で、ゴールデンウィーク型の大型連休は2〜3ヵ月前から押さえられることもある。

欧米・オセアニアの長距離ゲスト(米国、英国、オーストラリア、ドイツ、フランスなど)は最も長いリードタイムを持ち、当社ポートフォリオでは6〜12週間前の予約が一般的だ。ロンドンから日本へ2週間の旅行に来る家族は、数ヵ月前から計画している。また、日程も固定されていることが多く、「8日から13日に東京に泊まりたい」というタイプで、柔軟性は低い。直前予約の可能性は非常に低く、8〜10週間前の価格設定が適切でなければ、このセグメントを取りこぼすことになりかねない。

季節によって変わるか?

劇的に変わる。ゴールデンウィーク・お盆・桜(3月下旬〜4月上旬)・正月などのピーク期は、全セグメントでリードタイムが伸びる。海外ゲストは桜の時期を1〜2月に予約する。チェックイン6週間前の時点で、ピーク日程のカレンダーはほぼ埋まっている状態が理想だ。まだ空きが多い場合、それは価格設定が序盤から強すぎたサインかもしれない。

肩(ショルダー)シーズンは逆になる。たとえば10〜11月は天候が良く需要もあるが、遅めに予約が入ることが多い。10月に旅行しようと考えているゲストが探し始めるのは9月かもしれない。その時期まで高値を保ちすぎると、空室のまま終わることになる。

プラットフォームによる違い

私自身、AirbnbとBooking.comをまたいで物件を運営してきた経験から、Booking.comは一貫して短リードタイムの予約を引き寄せる傾向があると感じている。Booking.comのUIや利用者の行動特性は、直前で比較検討して素早く決断するタイプに向いている。一方、Airbnbの利用者は、特に日本旅行のようにルート全体を組み立てる必要がある旅では、より早めに予約する傾向がある。

同じ物件でも、Airbnbで2週間前に空きがあっても、Booking.comが5日前に埋めることがある。逆もある。レートパリティを意識しながら、どのチャネルをどのフェーズで活かすか戦略的に考えると良い。

価格戦略にどう活かすか?

**早期の値引きを止める。**欧米のゲストが8〜10週前に予約するなら、11週前に価格を動かす必要はない。そのセグメントを定価で取れる時間が十分にある。

**直前フロアを設定する。**チェックイン5〜7日前以内に入ったら、高値を維持しても取れることは少ない。10〜15%程度の適切な引き下げで短リードタイムのゲストを取るほうが、空室より明らかに良い。これは戦略的な決断として行うべきで、パニックで動くものではない。

**カレンダーの埋まり方を指標にする。**ピーク期の3週間前にカレンダーがまだ空いている場合、それは本物のシグナルだ。価格ポジション、掲載品質、OTAランキングを確認すべき時期で、単に様子を見る段階ではない。

**セグメント別のギャップに注意する。**韓国からの週末需要が見込める物件で、金曜日が10日前になっても埋まらないなら、掲載内容か価格に問題がある可能性が高い。リードタイムのデータがあれば、「まだ早い」なのか「すでに異常」なのかが判断できる。

BenStayでは、物件全体の価格自動化を考える上で、セグメント別リードタイムの把握を前提にしている。計算式としてではなく、ギャップが問題かどうかを判断するためのフレームワークとして活用している。

データがない場合は?

ほとんどのOTAのダッシュボードでは、リードタイムのきれいなレポートは出ない。最も簡単な出発点:過去6〜12ヵ月の予約履歴をスプレッドシートでエクスポートし、予約日からチェックイン日までの日数を手計算する。国籍(ゲストプロフィールで確認できることが多い)と季節でグループ化する。ラフな傾向でも、感覚だけで動くより遥かに役に立つ。

数シーズン分のデータが集まると、「カレンダーがいつ頃埋まるべきか」という感覚が養われ、ギャップを早期に発見して手を打てるようになる。

よくある質問

Q: 日本の民泊で直前予約の割合はどのくらいが健全ですか?

社内の診断基準として、予約の25〜30%以上がチェックイン7日以内に入っている場合は価格設定を精査しているが、適切な閾値は市場・季節・チャネルミックスによって異なる。直前予約自体は普通のことだが、問題は「その価格で満足できているか」だ。

Q: 空きを埋めるために直前割引を使うべきですか?

チェックイン5〜7日以内に自動適用する直前割引は、特にBooking.comでは効果的なことが多い。ただし、価格感応度の高いセグメントに「待てば安くなる」と学習させるリスクがある。直前割引は10〜15%程度に抑え、カレンダー全体ではなく特定の夜に限定して適用することを勧める。

Q: 最低泊数を設定するとリードタイムは変わりますか?

はっきり変わる。3泊以上などの最低泊数を設定すると、最も衝動的な短リードタイム層が絞り込まれ、予約窓が早まる傾向がある。長い滞在にはより計画が必要なためだ。1泊の直前予約が多い場合、最低泊数の調整で予約者の層が変化するが、市場によっては予約全体の件数が減る可能性もある。


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